第二話

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私立メルタニン学園中等部。 4月になり、僕はそこにいた。 学校の近くの寮(とは言っても各部屋が独立したマンションを借り上げているらしい)に引っ越したのは昨日だ。 周りの部屋からは既に賑やかな雰囲気がつたわってく伝わってくる。 僕は特段挨拶回りもせず、届いていた書類や制服を眺めていた。 ベージュに焦げ茶色のチェック柄のシャツに、紺色のブレザー。 派手だった。 入学式の日、僕は紙に書かれていた1年Ⅰ組の扉をくぐった。 そこに広がっていたのは、 想像し得ない世界。 1年Ⅰ組はスポーツ特化クラスの中でも、特待生ばかりを集めたクラスだとの説明はあった。 しかし予想とは裏腹に、生徒たちは鮮やかだったのだ。 金髪、青、赤、ピンク 絵の具をぶちまけたような、 今まで僕の世界にはなかった色だった。 入口で中に入る一歩が出せないでいると、 「おー!お前もこのクラス!?早く入ってこいよー!まぁた派手だなー」 「お前が言うなよー」 真っ赤な髪を逆立たせた少年が、笑顔で手招きする。 笑顔なんて、スリヤ以外のものを久しぶりに見た気がする。 それでもどうしようか迷っていると、赤髪の少年が教室の真ん中から走りよってくる。 僕は精一杯強気を保とうとした。 大きく息を吸って、彼の目を見た。 「おう、おれ吉畑光春。」 「…山本ツトムだ。よろしく。」 「ツトムな、おっけい!仲良くしよーぜー!」 肩をバンバンと強く叩かれ、そのまま腕を引っ張られて教室に連れていかれる。 「お前何で特待受けたん?」 「え?さぁ、なんだろう?」 「えぇ!?まさかの何でもこいタイプか!?やーめーろーよー俺の野球ロードを邪魔してくれんなよ?」 「なんだいそれは。知らないよ」 勢いのままに喋る光春に、思わず苦笑する。 彼は野球推薦で入学したらしい。 他にも先に仲良くなっていたクラスメイト達を端から紹介された。 陸上、サッカー、体操、水泳、様々だが、僕とは明らかに違い、やりたいことをやりたくてこの学校に来たらしい。
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