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中はテントの大きさよりも想像を越える広さだった。
おそらく地下を利用しているのだろう と思う。
地表ではテントだけだが、中へはいると地下を掘ってテントの大きさよりも多くスペースを作り、そこで演出を行う。
「椅子いっぱいだね。自由席なのかなー」
リリーはうろちょろと地下を歩き回る。
ベルはたまらなくなり、リリーの手をとった。
「何?」
「これ…。危ないから持っていて 。」
リリーは不思議そうな顔をして振り返ってる形から、僕の正面に向き直る。
僕は"あるもの"をリリーの手首にかけた。
ーーー シャラン…
「…鈴?」
「うん。二つあるから一個持ってて」
ベルはもうひとつある鈴を鳴らす。
リリーの貸した鈴よりも音色が少し低かった。
ストーンが数珠のようになっていて、その中の一つに鈴がついたブレスレッド。
僕のがレッドメノウで、彼女のはクリスタルで作られている。
「でもこれ…」
リリーが言いかけたその時、
「観客の皆様。ここは第一回記念として、席を自由席とさせていただいております。どうぞ、この機会に前へいらしてください」
「あ、アナウンスだ」
僕が呟いた。
リリーは少し曇った表情をした気がしたが、すぐに笑顔に戻った。
そして手首を振り、再び鈴を鳴らす。
「ベル!前の席に行こうっ」
「うん。」
ラッキーだったのか、ちょうどステージから二番目の列の席が二つ空いていた。
リリーは果敢にその席を他のお客さんから奪取する。
「ふーっ。前の方でよかったー」
言い仕事した、と言わんばかりの表情でリリーはこちらを見てくる。
「…お疲れ様でした」
僕は思わずそう呟いた。
数分が経った頃、全体のライトがゆっくりと消えていった。
辺りは真っ暗。
「きゃーっベル怖ーい」
椅子に腰かけたリリーはふざけてベルの腕をつかむ。
シャラン…
リリーが隣にいる。
その存在を鈴の音がしっかりと示していた。
「あ、始まる…」
「Ladies and gentleman…」
英語で放送が鳴り響く。
その放送と共にステージの幕が上がった。
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