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「It's show time!」
サーカス団の一人が叫んだ。
その言葉を合図だったのか、水中の道化師(ピエロ)は、左手の手錠を上へあげる。
すると
ドシャァァァァァンッ!!
突然、テントの入口から何かが壊れる音が聞こえた。
観客は水槽から一気にそちらの方へ振り返る。
数分もしないうちにゴロゴロと奇妙な音が聞こえてくる。
その音とはだんだんとこちらへ近づき、陶器のようなものが入口の階段からステージの方へ転がってきた。
「きゃあああああ!!」
急に女性が、叫び声を上げる。
陶器のようなものの正体は…人の頭部だった。
首の辺りが、食いちぎられているように切断されている。
「え…?」
僕を含め、周りのもの達は状況がつかめていない。
その異常な光景に、吐き気を催すものもいた。
「キシャァァァ」
人の頭部が転がってきた入口から、今度は奇妙な声が聞こえてきた。
頭部から目を離し、再び上を見上げると口が真っ赤に染まった…人間がいた。
全裸で、全身がただれ、皮膚の色が人間じゃない。男女それぞれの特徴も消えており、性別すら認識できないほどだった。
パット見た感じでは人間。
だが、とてつもない異様な雰囲気に我々は息を呑んだ。
「ま…待て。私が話をしよう。」
男性が一人、異形の存在に近づいた。
"それ"は口を開けたまま下を向き、動かない。
「き、君の名前は?」
男性はゆっくりとそれに近づき、その肩に触れる。
それは固まったままだ。
男性はほっとしたのか、その者の肩をつかむ状態から、肩を組む形に切り替えた。
「こいつはどうやら、この頭部のとは関係無さそうだ。見た目はあれだが、たぶん普通の…」
男性が、まるで怪物を捕まえたかのように堂々とした態度で観客に言葉を投げ掛ける。
「グギ…ッ」
肩を組まれていたそれが、首を男性の方に曲げた。
そして
「…」
「…」
プシュー… と、シャワーのような音をたて隣にいた男性は倒れ込む。
それは、そのまま倒れた男性の体をむしゃむしゃと食べ始めた。
「い…いやあああっ」
観客達はどっと流れを作り、一気に入口へ群がった。
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