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長谷川は平気そうに雪をペラッペラのプラスチック…言わば下敷きみたいなもので一生懸命に雪をかいている。しかし、専用の雪掻きでないため、手の甲に冷たい雪が容赦なく長谷川の華奢な手に覆いかぶさっていく。
平気そうにヘラヘラと笑う長谷川に河東は苛立ちを感じた。
この寒空に暖かいダウンではなく薄手のパーカー。
寒いし、雪だって冷たいのに、平気なふりをする長谷川に河東は手に持っていた雪掻きを長谷川の車に向けた。
「うわっ!」
長谷川は大量の雪が自分の方に一気に降り注いできたことに声をあげた。
そして、振り注いだ場所を見ると、ラパンの天井の一部の雪が撤去されていた。そして、その横を雪の大群が押し寄せ、また長谷川の真横に大量の雪が落ちた。
「か、河東さん!?」
余りにも突然な事に長谷川は素っ頓狂な声をあげると、河東は無言で手際よく車の雪を降ろしていく。
牡丹雪はまだ降り積もる。深々と降るその中で黙々と河東が降ろす雪の音が長谷川にとってそれは、とても大きく聞こえた。
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