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ポロン─
まるで、雫がこぼれ落ちる
ような…繊細な音。
初めて彼のピアノを
聞いたのは、2週間ほど前。
不良で有名な桐本くん。
初めて彼の喧嘩を見たのも、
2週間ほど前。
彼の周りには、たくさんの
人が倒れていた。
私は気がつくと、彼の前に
立っていたんだ。
『何?』
冷たい瞳は私に助けを
求めているようで、
いつの間にか彼を音楽室
へ連れてきていた。
近くのソファーで寝そべる
彼の隣で、私は小さい頃
母から教わった曲を奏でる。
『何の曲?』
『お母さんの曲』
ふぅん、彼はそう言って
小さく微笑んだ。
『弾いてみる?』
それが、彼のピアノとの出会い。
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