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「はぁ…、はぁ…、はぁ…」
結局俺はあのまま全速力で学校の昇降口まで駆け抜けた。
途中で女子生徒に嘲笑されていた気もするが、気にしてられるか。こっちは真剣なんだ。
腕時計をちらっと見ると、時刻は八時二十三分分だった。八時三十分までに登校すれば遅刻扱いにはならないのでぎりぎりセーフか。
俺は昇降口で靴を履きかえ、二年の教室へ向かうため階段を上る。
俺たちの高校は二年生は全部で五組まである。各クラス四十人程度か。
そして俺は廊下をそのまま直進し、二年三組の教室へ入った。
入った途端「あ、鬼太郎じゃん!」「今日も妖怪退治してて遅れたのかー?」「目玉おやじはどうしたのー?」などという声が各所から聞こえる。
一応説明しておくと鬼太郎というのは俺のあだ名だ。俺は髪の毛が左目を隠すように伸びていて、右目にはほとんどかかっていないのでこのあだ名がついた。
「お、聡介。うーっす」
そんな中から「鬼太郎」という呼び方以外で呼ばれたので、俺は前を見た。
「おぉ、隼か…」
俺の目の前にいた男の名は雲崎(くもさき)隼(しゅん)。見た目は誰がどう見てもイケメンと思う顔立ちの男で、身長も175ある俺より高く、所属しているサッカー部ではエースのFW(フォワード)。しかも声までかっこいいときたもんだ。
性格も穏やかで非常に幅広く女性に人気がある。俺とは真逆のような奴だ。
そんな隼に俺は無気力に返事を返す。
「それよりお待ちかねだよ、あの子」
と言って、隼が指差した先を見ると、明らかに不満そうな顔をしてこちらをじっと見ているポニーテールに髪を結んだ小柄な女性がいた。
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