プロローグ いたって穏やかだった日のお話

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「大事な用よ」 俺がふと横を見ると、そこには明乃が立っていた。やけに俺をにらんでいる気がする。 「なんだよ」 それを気に入らなく思った俺は、挑発的な言葉を返す。こいつに睨まれるのは基本的に気に入らないからな。 「…………」 すると、ツカツカと明乃が俺の方に早足で歩み寄ってきた。 「っ!!」 いきなり胸倉を掴まれた。なにすんだこの野郎は…! さすがの俺もいつも不愉快に思ってるやつにいきなり胸倉を掴まれたら黙っちゃいねぇぞ! 「…何すんだよ」 「…あんた……」 とは言っても相手は女性なので、いきなり反抗するわけにもいかない。 俺は明乃のつぶやいている声を聞きつづけた。 「あたしに協力する気は…、ない?」 「は?」 「何でも屋をやる気はないかって…、聞いてるの…」 ぎりぎりと俺の胸倉を掴みつつ明乃は尋ねてきた。明乃の顔は下を向いていて顔は見えない。 何?何でも屋?いきなりどうしたんだと思って、俺は再び聞き返した。 「何でも屋って、いった―――っ!!」 今度は壁に思いっきりぶつけられた。どかんと大きな音がする。 いってー!!この女(アマ)、いい加減にしやがれ!! 「やらないかって…、あたしが聞いてるのよ…。答えはイエス、ノー。どっち?」 さすがの自己中心的な考え方もここまで来るとすがすがしい。お前はどっかの国の独裁者にでもなった方がよかったよ、多分。 だが俺もここまで痛い目にあわされてそう簡単にイエスと言えるわけがない。 右手で明乃の左手首を掴み、そのまま胸倉に掴まれている手を離していく。 「っ、いたっ――!」 明乃が何か言っているが、気にしない。いきなりこんな態度されて許すほど俺の心は広くないんでね。 「てめぇさっきから随分暴力的な態度とってくれちゃってまぁ…」 俺はニヤけながら明乃の手を離していった。明乃は目にうっすら涙を浮かべているが知ったこっちゃない。そうしていくうちに、完全に手は離れた。 「あぁさっきの質問の答えだけどな。完璧にノーだ。お前のお遊びに付き合って俺の平穏が崩されるのはまっぴらごめんだよクソ女が」 「………」 俺は捨て台詞を吐いて、暗がりから出ようとした。
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