死を運ぶもの

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「120円になります」 歩き始めて数時間後、夏希は村に数少ないコンビニに立ち寄っていた。 炭酸の入った清涼飲料水を一本買うと、コンビニの先の日陰で座り込み、喉を潤す。 じりじり、焼ける音が聞こえる。 必要最低限の生活音と、蝉の五月蝿い鳴き声、たまに道を歩く人々の会話、玄関先で雑談する老人の声。 何故だか全ての音が、じりじりという熱に焼かれて死んでいくように思えた。 そう思うと酷く気持ちが悪い。 「…暑い」 そんな、死の音に耐えきれず呟くと、思いがけず応えがあった。 「暑いわね。着替えくらいして来れば良かったんじゃない?」 真雪であった。いつの間にか真横の日陰に、真っ白な少女は立っていた。 暑いと言うくせに、自分は汗一つかいていなかった。 「…ナツキは、ここに来ないと思ってた」 「……気晴らしだよ」 「そう」 「真雪は、死神してた…のか?」 「ええ、見る?」 夏希はぞくりとした。死の音が、真雪を引き寄せたのか、真雪が死の音を感じさせたのか。 真雪は見たければついてきて、とだけ言い、歩き出す。 夏希は一抹の不気味さを感じながら、好奇心のようなものに惹かれ、彼女の後を追った。
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