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「殺すことも出来るわ」
だから、真雪がそう言ったとき、夏希はどきりとした。
真雪の口から、殺す、などという単語が出てきたことが意外で、思わず聞き返してしまう。
「…え?」
「今はまだ、難しいけれど。あれくらいなら」
真雪はそう言って徐に辺りを見回すと、近くを歩いていた野良猫を見つけ、徐に手を伸ばした。
真雪に触れられた猫は、しばらくすると、ぽてりと、地面に倒れ、動かなくなった。
「…殺したの?」
「うん。この猫、もう寿命みたいだし」
「衰弱死したみたいだ」
その場にある猫の死体が、あまりに綺麗で、夏希はついそう呟いていた。
「…ナツキは、意外と、残酷なのね」
真雪は 、夏希の方を一瞬見やると、再び猫に手を触れる。
すると、じわり、死体から血が流れ出た。
血は地面に吸い取られ、染みは徐々に広がっていく。
「カタチを無くすことも出来るけど」
真雪は夏希の方を向くと、無表情にそう言った。
邪気も悪意も湛えない、その瞳が恐ろしく冷えていて、夏希は背筋を冷たい汗が伝うのを感じた。
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