死を運ぶもの

7/8
前へ
/112ページ
次へ
「殺すことも出来るわ」 だから、真雪がそう言ったとき、夏希はどきりとした。 真雪の口から、殺す、などという単語が出てきたことが意外で、思わず聞き返してしまう。 「…え?」 「今はまだ、難しいけれど。あれくらいなら」 真雪はそう言って徐に辺りを見回すと、近くを歩いていた野良猫を見つけ、徐に手を伸ばした。 真雪に触れられた猫は、しばらくすると、ぽてりと、地面に倒れ、動かなくなった。 「…殺したの?」 「うん。この猫、もう寿命みたいだし」 「衰弱死したみたいだ」 その場にある猫の死体が、あまりに綺麗で、夏希はついそう呟いていた。 「…ナツキは、意外と、残酷なのね」 真雪は 、夏希の方を一瞬見やると、再び猫に手を触れる。 すると、じわり、死体から血が流れ出た。 血は地面に吸い取られ、染みは徐々に広がっていく。 「カタチを無くすことも出来るけど」 真雪は夏希の方を向くと、無表情にそう言った。 邪気も悪意も湛えない、その瞳が恐ろしく冷えていて、夏希は背筋を冷たい汗が伝うのを感じた。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加