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その日は、深緑が目に痛い、とても暑い夏の日だった。
山深い村にあるこの高校は、つい昨年に廃校になった隣の集落の高校と統合されたのだが、それでも一学年二十数人しかいない、小さな学校だった。
未だ木造の校舎には、無人の教室が幾つもあり、過疎化した村の悲しさを象徴しているように思える。
その校舎の四階の教室から、少年は外を見ていた。
クーラーなんて在るはずもなく、四方が鬱蒼と木に覆われたこの校舎は風通しも悪い。
それでも森の涼しさや四階に吹き込む風はまだ、都会のアスファルトに囲まれた夏よりはマシなのかも知れない。
と、訪れた事など殆どない都会を哀れんでみても、暑いことには変わりなく、少年は遂に暑さに耐えきれず、ブレザーの袖を捲りため息をついた。
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