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それはやはりそこに居た。
本当に、真っ白な少女が校門に寄りかかるように立っていた。
その白さは周囲の深緑に囲まれ、一際異彩を放っていた。
「やぁ」
少年は少女に声をかける。
ぴくん、と身体が動くと少女は真っ直ぐに少年を見据えた。
近くで見れば、睫毛までも白く、瞳も虹彩等の縁取りを除いては殆ど白色であった。
人であれば考えられないが、少年は最早この少女がただの人間であるとは露ほども思っていなかった。
「あなたは、誰?」
少年が少女の姿に逡巡していると、少女の唇が動いた。なる程、唇はほんのりと桃色で、口の中は人のように血の色をしていた。
「僕の名前は夏希、ここの生徒なんだ」
「…ナツキ」
「君は?」
「私は、死神よ」
「死神?」
夏希の言葉に、少女はと小さく頷いた。
「死神には名前はないのかい?」
「名前、私の?」
「あぁ」
「…特に無いわ」
死神と会話をしている。そんな常識では考えられない体験にもかかわらず、夏希の心は何故か穏やかだった。
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