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少女は夏希の瞳を覗き込み、不思議そうに首を傾げた。
「ナツキは私が見えるの、不思議」
「普通の人には見えないのかい?」
「…多分、見つかったことは無いから、見えないと思ってた」
少女の答えが愉快で、夏希はくすりと笑みをこぼした。
少女もつられてか、その陶磁器のような顔にほんのりと笑みを浮かべたように見えた。
「ナツキは面白いから、ナツキがつけて?」
「つける?」
「私の名前、ナツキがつけて」
「僕が?」
「そう、つけて」
夏希は少しの間、思案した。少女のその白い姿を前に、彼女の名前を考える。
「じゃあ…マユキ」
「マユキ?」
「そう、真雪。真っ白な雪で真雪」
「マユキ…真雪…まゆき」
少女は言葉を咀嚼するように何度か口にすると、
「気に入ったわ。真雪」
そう言って笑ってみせた。
その日から、死神の少女、真雪と、夏希の不可思議な日々が始まったのだった。
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