死を運ぶもの

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夏希の通う高校は、山村の中でもさらに奥まった、山の麓というべき場所に建っていた。 高校への通学路は、開けた林道のような一本道で、そこを抜けると、村の住宅街のような場所に出る。 大抵の生徒は一本道を抜けて住宅街に向かうのだが、夏希の家は、その一本道の途中にある分岐路の先にある。 不自然に舗装されたそのアスファルトの道を抜ければ、町に似合わぬ新しい家が立ち並んでいた。 村のニュータウン構想で出来た新興住宅地だったが、事業は芳しくないのか、夏希は、いまだかつて自分以外の生徒がアスファルトの分岐路を歩いているのを見たことがなかった。 その日、夏希は、他の生徒に紛れ、一本道の先の住宅街に来ていた。 皆一本道を抜けると、思い思い自宅に向かっている。 夏希は、何とはなしに、住宅街を歩いていた。 死神が働くなら、人が居る場所だろう。真雪に会おうと足をのばしたわけではなかったが、運が良ければ会えるかも知れない、そんなことをぼんやりと考えていた。
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