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もう慣れてきちゃったな。
まったく変化しない灰色の空に、石像のようになってしまった大人たち……最初はあんなにも怖かったのに。
村のほぼ中央に位置する広場で、ベンチに座って私は空を見上げた。
空に何かがあるからというのではなく、こうしていると気がまぎれるからであった。
広場にも何体か立っている灰色の像。
それらはもともとはこの村の大人たちで、一年ほど前までは普通に生活していた。
けれど、ある日突然灰色の像になってしまい、呼びかけても返事はないし、生きている気配もなくなってしまった。
像になった本人たちだけでなく、残された子どもたちにも何が起きたのか分からなかった。
わかったのは自分たちで生きていかなければならなくなったことだけ。
像を見ると大人たちのことを思い出して辛くなる。何もできなかったことが悔しくなる。
辛い思いを、悔しい思いをしたくないから、私は空を見上げていた。
弱い風が短めの髪を軽く揺らすのと見える青い空だけを感じているのは結構気持ちいいし。
「あ、里奈!相変わらず早いね」
声をかけてきたのは橋本春乃。
運動をしたあとらしく、半袖のTシャツに短パンなのに汗をかいていて、いつもは下ろしている長い髪も後ろで一つにまとめてある。
「みんなとそんなに変わらないよ。そろそろ集まってくるころだろうし」
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