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ステージに立つ君は、僕とは別世界に住む人間のようで。
僕なんか、近づくことすら出来ない、そんな存在。
君が見ている景色はどんなだろう。
想像しようとして、でもきっと僕の想像の域を超えているのだろうと、諦める。
客席にすら居られない僕と、君は本来道を交えることはない筈なのに。
今日も君は僕のところにやって来る。
「ただいま」 「おかえり」
少し疲れた表情の君。
それでも、いつも通りの可愛らしさは健在で。
小さく微笑む君は、ほわほわの空気を出している。
「何、見てたの?」
「ううん。何でもない」
「ふうん」
君は、君のライブDVDを僕が見るのを凄く嫌がるから。
――君には秘密。
「明日は早いの?」
「うん。7時からだから、少し早いね」
そっか、と頭に僕の予定を書き込んで、君は自室へ向かう。
たしか、君は明日オフ。
僕は朝からぎっしりのスケジュール。
本当はオフだった。
でも、突然の仕事でオフはなくなった。
遊ぶ予定だった。
デートの予定だった。
君が、心なしか寂しそうなのは、僕にも分かるし僕のせい。
でも、君も僕も分かってる。
どれも出来ないことくらい、分かってる。
「――ねぇ、今度一緒に映画見よっか」
君の部屋からそんな声。
「…うん。出来たらいいね」
「いつになってもいいよ。一緒に見よう?」
「そうだね」
「うん。楽しみだね」
「うん」
部屋から顔を覗かせ、ぱぁっと笑う君。
どんなに、二人の時間が合わなくても
それでも、幸せな時間を願うのはだめではない筈だ。
僕も、君に笑顔を返した。
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