46人が本棚に入れています
本棚に追加
「郁……?」
七条が問掛けると
「啓太が何を考えてるのか分からない……」
紅茶に映る自分の顔を見つめながら西園寺はポツリと呟いた。
「私と…ッ…そのっ……出来ないからって……他の奴らと仲良くしてッ……」
言い終わった途端、西園寺の目からは一筋の涙が流れ、コップを持つ手は震えていた。
「啓太はッ…私の……ッ…体……だけが目当てだったのか……?」
「直接聞いてみたらどうですか?」
「無理だッ……そんな事をしたらッ………」
「…肯定されるのが恐い?」
「ッ………」
「伊藤くんに限ってそんな事有り得ないと思いますが…」
――分かってる。
でもこの醜い感情を抑える術が分からない。
体をほんの少し繋げてないだけでこんな風になってしまうなんて。
私は一体どうしたんだ…――。
「郁…。郁が嫉妬する姿を僕は初めて見た気がします。」
「は…?」
「クスクス…それだけ郁が伊藤くんを好きになっていたとは…。正直ちょっとショックです。郁の一番はいつも僕だと思ってたのに。」
「なっ…!?バカッ!何を言って…」
「しぃ~。もう黙って…?」
必死に言い返す西園寺を無理矢理黙らせると、七条は西園寺を優しく抱き締めた。
「郁がこれだけ伊藤くんを想ってるんです。伊藤くんの一番も、きっと郁ですよ…。」
「………啓太の一番が…私……」
「えぇ。僕が保証します♪」
だってあんなに分かりやすしですしね、っひっそり付け加えたのはきっと誰にも聞こえてないだろう。
―と、その時。
最初のコメントを投稿しよう!