【狐】

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「お母さん、見て、狐!」 照り付ける陽射し。 人間がこちらを見て通り過ぎて行く中、 幼い少女が母親の手を引き近付いてきた。 「狐さん、大丈夫?痛い?」 頷くことも出来ず、ただただ横たわっていた。 このまま死んでしまおうと思っていた。 少女は俺の頭を撫でた。 「…柚(ユズ)、手当てをしてあげよっか。散歩は中止して、家に帰ろう。」 母親が少女を柚と呼び、俺を抱き上げた。 こんなに暑いのに、腕がとても冷たくて、気持ちが良かった。 「狐さん、元気になってね!」 無邪気な笑顔の少女。 何も知らない純粋な瞳。 人間にも、こんなのがいるんだ。 初めて知った。 揺れが気持ちいい。 少女の笑顔が眩しい。 そして、俺には見えてしまった。 少女が美しく成長した姿と、 彼女が辿る運命が。 そして、俺は決めたんだ。 彼女を守る、と。image=483288878.jpg
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