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「寝てたわよ。悪い?」  ヘッドホンの向こうからまたも深いため息。 「目が覚めたら自分の上半身が炭化しているかもしれないこの状況で、寝られるってなら悪いことじゃないのかもね。」  アザレと呼ばれた少女の乗っている深緑色の蜘蛛に似た15mほどの機械は、宿泊施設だったと思われる高層建築のロータリーで雪の中に鎮座していた。  外気温は氷点下十数度。空調が効いているとはいえコクピット内の温度は0度前後だろう。防寒服を着込んだ両足を軽く震わせつつモニター越しに周囲を眺めるが外はいつも通りの白一色。いや、夕闇が迫っているので灰色一色と言ったところか。見える範囲内には他にこれといって異常は無い。  機体と同じ色の前髪をいじりながら、「重力感知式索敵システム(GTS)」に目を通す。味方の反応が3。ソナーは自分以外の駆動音は探知範囲内には無し。こちらも異常は無い。  彼女たちの乗る兵器に搭載された「クライングジェネレーター」と呼ばれる動力源は、周囲の重力子を膨大な電力に変換すると同時に独特の叫び声のような騒音を吐き出す。  周囲の重力子を消費すれば遠方からでも重力感知式索敵システムに引っかかるし、近距離なら独特の駆動音で発見することも出来る。  ―――まぁ、何の反応もなく、敵の気配もないからこそ彼女は睡魔をあっさり受け入れ、いつ「敵」がきても大丈夫なようにコンディションを整えていたのだが。
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