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「わかればよろしい。最後衛の私の所まで「敵」が来た頃には、あなたたち3人こそ上半身が炭化して誰が誰だか分からな―――
何も映っているはずのない背部モニターに一瞬影が映った。背筋が凍る。アザレは見間違いかどうかを確認することなく即座に乗機の腰部ユニットを半回転させて右肩部に固定された「電磁誘導型狙撃銃(リニアレールライフル)」を撃ち放った。金属が削れるような甲高い轟音と共に発射された金属の塊は、そのまま背後の建築物の上層階に真っ直ぐに突き刺さり―――
砲弾を回避した白い謎の「敵」は、彼女の4脚の蜘蛛に似た機体の砲身の内側に身を滑らせ、コクピット部のカバーに手にした小型榴弾砲(ハンドグレネード)の銃口を密着させてきた。
ヘッドホンの向こうからこちらの異常を感じた少年の声が聞こえる。
「アザレッ!?」
「キリオ、こっちへ来たかも知れない「敵」って、直立歩行型の白い奴?」
「・・・・・・いや、「6脚蟻型(アント)」が2機って、アザレッ!何かに襲われているの!?」
ヘッドホンの向こうでキリオと呼ばれた少年が妙に間をおいた後、慌てふためくのを聞きながら、アザレは舌打ちをしながら小声で呟く。
「こいつにジェネレーターを起動されたら、私の上半身どころか全員炭化させるのに5分とかからないかなぁ」
「クライングジェネレーター」は起動すると周囲の重力を消費する。そのため機体にかかる負荷は著しく減少し、予備電源駆動のときよりも遥かに高い運動性を得ることが出来るのだが―――目の前の白い「敵」の機体は未だに駆動音を出してすらいない。おそらく予備電源で稼動しているのだろう。ということは、少なくともこちらの機体を一方的に圧倒するのに、ジェネレーターを起動する必要すらない性能を有しているということだ。
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