さくらの木の下で

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桜に花と書いて“おうか”。 よく女の子に間違われるが、僕は自分の名前が気に入っている。 「桜花」 そしてその名に相応しく、薄紅色の桜の花が一番好きなのだ。 だから今日も、何時ものように庭先にある満開の桜の木を見上げて日向ぼっこをしていた。 よく高校三年生にもなってと言われるが、この時間が一番好きだ。 「ん?」 僕の大好きな春。 特に桜が美しく咲き誇るのは一時しかない。 その貴重な時間を一緒に過ごしてるのは僕と瓜二つの顔をした女の子。 前までは唯一の違いが髪の長さだけだったが、今は女として確かに違いが出ていた。 僕の双子の妹、春桜(はるか)。 僕にとっては同じときを生きた、半身のような存在だ。 「もうすぐ桜が散っちゃうね」 その言葉に少し悲しみの色があるのは春桜もこの美しい花が好きなのだろう。 「来年もまた見られるかな」 僕はすぐに返事を返せなかった。 見られるよ、と言う言葉が根拠の全くないものだと分かるほど、春桜は自分のことを知っている。 「見られるといいね」 僕の精一杯。 よく頑張ろうって言葉を使う人がいるけど、もう頑張っている人にはかけちゃいけないと思う。 そして、頑張ってもどうしようもないことがあるのを、僕は知っている。 .
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