さくらの木の下で

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「タイムマシンがあったらいいのにな」 どこかで聞いたことがあるフレーズ。 昔、一緒に青い猫型ロボットのアニメを見ていたときにテレビに向かって春桜が言っていたのを思い出した。 その時は気にも止めていなかったはずなのに、何故か記憶の隅に残っていた。 「そしたら桜花は何する?」 「過去に戻ってやり直したいな」 今年受験だと言うのに、テストの結果は芳しくない。 もう一度一年生からやり直さなくてはならないほどだ。 そして僕は何より、春桜をもっといろいろな所へ連れて行きたかった。 その気持ちを知ってか知らずか、春桜は柔らかく微笑む。 突然に舞い込んだ風は桜の花びらを巻き込み、桜吹雪を見せてくれた。 開いた春桜の掌には花びらが一枚。 春桜は花びらをただ見つめていた。 その光景を尻目に、僕は桜を見上げている。 「ねぇ、人はよく花を見ると散っていく花のように、美しく命を落としたいと。 無駄に長らえるよりは潔く――って言うよね」 二人の沈黙を破ったのは春桜からだった。 僕は言いたいことが掴めずに戸惑うしかない。 .
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