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「な、な、な、何なのいきなり!? 誰? 誰なのあんた!?」
「僕は隣のクラスの上馬伏 亮(かみまぶし りょう)って言います! あなたのことを見た瞬間、運命の人だと直感しました!」
力強くドアを開けようとしながら馬男もとい、上馬伏 亮とやらは言う。
二重の意味で、力強くである。
「上馬伏だかひつまぶしだか知らないけど、隣のクラスにあんたみたいな馬男はいなかったよ!」
「これは、今朝目が覚めたらこうなってたんです! だからお願いです! 助けて下さい!」
「助けてって何がよ!? むしろ私が助けてほしいくらいだっての!」
「いやぁこういうのって運命の人とのキスで元に戻るのが定石じゃないですか?」
「まぁ、そうだけど……」
「というわけで、人助け、いや馬助けだと思ってキスさせて下さい」
「何が、というわけで、なのよ! そんな軽い感じに言わないでよ!」
「僕は……このままの姿で、一生を過ごすのは……嫌です……助けてっ……下さい……お願いです…… 助けて下さい……」
……だからといって、重い感じに言われても困るなぁ。
「……ところで、私のどんなとこが好きなの、上馬伏君?」
「それは……優しいところとか、笑顔とか、無邪気なところとか……」
……なんかテンプレート的な誉め言葉だなぁ。
へぇ。ほぉ。ふぅん。
「で、建前は置いといて本音は?」
「僕、ロリコンなんです」
「誰が女子小学生じゃゴルァア!!!」
おもいっきり足を踏みつけてやった。
踏みつけるというかジリジリと踏みにじった。
「痛い痛い痛い痛い痛い! でも小さい身体で一生懸命踏みにじろうとしてるあなたもイイネ!」
「人の! コンプレックスを! なんだと! 思ってんの! よ!!!!」
!マークの数だけ踏みつけたのを想像してくれたらありがたい。
「道中、片っ端から可愛い女の子にキスをしてみたけど、やはり運命の人じゃないと戻らないみたいなんだ。だからキスさせて下さい!」
「無理無理無理無理! 完全に犯罪者じゃないの!」
「その小さな身体を堪能させて下さい! お願いします! 耳原 蘭さん!」
と、上馬伏君は、私の名前をフルネームで呼んだ。
誰もが間違い、誰もが呼ばない、私の正しい名前を呼んだのだ。
「……え? 今、私の名前を呼んだんだよね?」
「は、はい……『みのはら あららぎ』さん」
耳原 蘭(みのはら あららぎ)
それが私の名前である。
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