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いや、何かファンシーな感じがするので訂正、跳ね飛ばされていた。
さながら漫画で雑魚キャラがやられるような、切りもみというか回転の加わった飛び方。
こうやって冷静に言ってるけども、痛いのなんの、気を失うんじゃねぇのってレベルでヤバい。
『道路を渡る時は右見て左見て手を挙げて渡りましょう』
幼稚園児の頃に先生に教えてもらったのが走馬灯として甦ってきた。
あぁ先生、意外に巨乳だったんですね……
うわぁ、そんな先生に泣き付いて抱っこしてもらってるよ、小さい頃の僕。いいなぁ羨ましいやいやいやいやいや!!
死に際の奴の発想じゃねぇよ!
まだ死なねぇよ!
と、意識がはっきりしたところで僕は事態を整理することにした。ちなみに現在もなお切りもみ回転中。どんなバトル漫画だよとかそんなツッコミはさておこう。
道路に、飛び出して、車に跳ね飛ばされた、以上。
いやいや、車じゃないはずだ。何せ、エンジン音なんて聞こえなかったのだから。
じゃあなんだ? こんな街中に象でもいたのか? もしくは化け物――
「ひでぶっ!?」
切りもみ回転終了。着地失敗でもれなく世紀末な断末魔をあげる僕だった。
僕の視界が一瞬暗くなる。
「んっ?」
野太い声が一つ。僕のじゃないよ? 僕のはもっと透き通るような美しい声で――
「はひはひふふはっはほはは?」
はっはー! 日本語でOK。もしくはその口にくわえてるであろう何かを飲み込みやがれ!
ガバリと僕は起き上がった。すると数メートル先に、“何かがいた”。
二メートルを超えるであろう身長に大人二人分くらいある肩幅。筋骨隆々なのは目に見えて分かり、特注であろうその服も袖の部分がなくなっていてノースリーブ状態だ。
おかげで白く光るムキムキの上腕二等筋が拝められる。全く嬉しくない。
さらに奇妙なことにそいつは僕の通う聖ヶ丘(ひじりがおか)学園の制服を着ているのだ。
顔はいかにもボディービルダーですよって顔で、顔で名前をつけるなら間違いなく『ジョニー』になりそうな顔だ。
顔は、だ。
しかし頭の方を見てみるとだ。
少し色の抜けた茶髪に縦ロールというのか? ともかくお嬢さんがやってそうな女の子を思わせる髪型に、女子の制服を着ているのだ。
この生き物を女子高生とは呼びたくない。
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