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introduction:近い未来の終わりの風景。
蒼の女神はそっと瞳を閉じる。
願ったのは違う未来だった。
この惑星を創る時に祈ったのは、ただの幸せ。
誰もが優しく微笑み、手を取り合う優しい世界。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。
悲しみにくれる蒼の女神の肩を、紅の女神はそっと抱き寄せる。
そしてそれぞれに決意を抱いた人間たちを見つめた。
神がこの世界を創り、神がこの世界を乱し、そして神は人に未来を託した。
なんと滑稽な話であろう。
それでも、と紅の女神は思う。
それでもそれは、悪い未来ではないのだろう、と。
もはや、神の手から全ては離れているのだ。
神の子は、己らだけでこの世界を生きていくだろう。
『始まった物語は、終わらなければならない。終章を飾るといいよ』
語るように話す紅の女神の声は高らかな福音のように響き、二柱の女神が手を翳した瞬間、それまでいた空間は音もなく砕け散り、蒼い空と青い海が広がる地上へと舞台を移したのだった。
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