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「そ・・・・・・っ」
思わず、マサアは声を漏らした。
夜闇の木々の合間から月明かりが差し込み、その光に晒された幼いミナミの顔。
そこには、赤黒い跡が這っていた。
明らかに何者かに殴られ、鬱血している状態である。
「それ」
「大丈夫だよ」
もうだいぶ前の痣だから、と。
震えた声で問うマサアに、彼女はまるでなんでもないことのように答えた。
「だからって、それ、どうしたんだよっ?!」
「――ここには、盗賊でも出るのかい?」
あまりにも忙しなく訊ねるマサアを遮り、タヤクが口を挟む。
その問いは暗にその類の輩がやったのかと言っていた。
しかし、ミナミはゆっくりとかぶりを振り、
「おとうさんとおかあさんがね、したの」
そう、小さく答えた。
ミナミの言葉に、ケイヤとマサアの肩が小さく震えたが、彼女はそんなことには気付かなかった。
ただただ、子供特有の甲高い声で言葉を紡ぐ。
「んとね、うち、セイタイテキコキュウとかいうのがなかったんだって」
経済的余裕のことだろう。
「だから、わたしを殺すか捨てるかして、お金を浮かせたかったんだって。でもわたし死にたくないし、抵抗してたらぶたれちゃって・・・・・・」
あはは、とミナミは笑う。
だからここまで逃げてきたのだと。
怪我が完治したら近くの町まで行くつもりだったとも言った。
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