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闇夜に薄い雲がはためく。
木々の隙から漏れる月明かりを避けるように走り抜ける四つの影。
必死に、何かから逃げるように駆けていたが、一番小さな影が「あっ」という声と共に前のめりに倒れた。
草に足を捕られたらしい。
先を走っていた三人は足を止めて駆け寄る。
草に臥していたのは十代半ばほどの少女だった。
眼鏡の隙から覗く、深い闇に溶けるような瞳で三人を見つめる。
『大丈夫』という意思を込めたものだったが、肩で切り揃えた髪は汗で頬に張りついていた。
その様子を見た一番長身の青年が地面を蹴って森の奥へと走り、眼鏡の青年は少女を抱えて近くの木に寄り掛からせた。
もう一人の少年は、木に登って自分達が走り来たほうを見やっている。
柔らかな茶色の髪が夜風になびいていた。
目を伏せたまま、少女は繰り返し譫言のように「ごめん」と呟き続ける。
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