77人が本棚に入れています
本棚に追加
/580ページ
唖然としたのはマサアだった。
ケイヤは早々にこの少女を始末しようと、その白い指を少女の喉元に食い込ませようとしていた。
タヤクはその状況を受け入れて黙って見ているだけである。
「ち、ちょっと待てよ?!」
それに気付き、慌てて待ったをかける。
あまり力を入れてなかったのか、少女は変わらず安定した寝息をたてていて、安堵の溜息をもらす。
「いきなり手をかけるなんて・・・・・・タヤクも止めろよっ」
タヤクがケイヤの意図に気付いていたことを察し、語気も荒く責め立てる。
しかし彼は特に気にもせず、ひょいと肩をすくめた。
「まぁ、そんなに怒るなマサア」
「怒るっ! 人殺しなんて」
させたくない、という言葉を、冷ややかな声が遮った。
曰く、処置だ、と。
「あそこから逃げるときに“あいつ”とも約束した。キーナを守ると」
ケイヤの放った言葉は、金色の瞳に動揺を走らせるには効果的だった。
ただその表情からはまだ、迷いが離れなかった。
――暫しの沈黙の後、口火を切ったのはタヤクだった。
「なんにせよ、この嬢ちゃんを起こして話し聞いたほうが早いな」
危険かどうかはその後だ、そう彼は言い少女の頬を軽く叩く。
残る二人も今度はおとなしくその様子を見ていた。
最初のコメントを投稿しよう!