1:夜闇の逃亡

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唖然としたのはマサアだった。 ケイヤは早々にこの少女を始末しようと、その白い指を少女の喉元に食い込ませようとしていた。 タヤクはその状況を受け入れて黙って見ているだけである。 「ち、ちょっと待てよ?!」 それに気付き、慌てて待ったをかける。 あまり力を入れてなかったのか、少女は変わらず安定した寝息をたてていて、安堵の溜息をもらす。 「いきなり手をかけるなんて・・・・・・タヤクも止めろよっ」 タヤクがケイヤの意図に気付いていたことを察し、語気も荒く責め立てる。 しかし彼は特に気にもせず、ひょいと肩をすくめた。 「まぁ、そんなに怒るなマサア」 「怒るっ! 人殺しなんて」 させたくない、という言葉を、冷ややかな声が遮った。 曰く、処置だ、と。 「あそこから逃げるときに“あいつ”とも約束した。キーナを守ると」 ケイヤの放った言葉は、金色の瞳に動揺を走らせるには効果的だった。 ただその表情からはまだ、迷いが離れなかった。 ――暫しの沈黙の後、口火を切ったのはタヤクだった。 「なんにせよ、この嬢ちゃんを起こして話し聞いたほうが早いな」 危険かどうかはその後だ、そう彼は言い少女の頬を軽く叩く。 残る二人も今度はおとなしくその様子を見ていた。
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