1:夜闇の逃亡

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二、三回も叩くと「ぅう?」と唸りながら少女が瞬き、目を覚ます。 「お、起きた」 ほっとしたようにマサアが呟くと、少女は不思議そうに大きな眼をしばたいた。 アメジスト色の瞳が三人をぐるりと見渡し、「あなたたち、誰?」と小首を傾げて問いてくる。 ケイヤがその問いに答えようとしたが、瞬巡したのちマサアを軽く肘で突いた。 自分のような、他人からしてみれば無表情な男よりも、年の割に童顔なマサアのほうが話し易いだろう、と配慮をしたのだったが。 「あぁ、えっと・・・・・・」 彼は超が百個ついても足りないくらいの阿呆者ということを、すっかり念頭から外していた。 言葉を選ぶことが高等手段のマサアに交渉役など。 思わず頭を抱えたケイヤを、どこか嘆かわしくも同情の目で見るタヤクだった。
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