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小さめのバックには、たいした物は入っていなかった。
青い薔薇の刺繍がされたハンカチ
ポーチに入った化粧品
ピンクのレースがあしらわれたシュシュ
普通は入っているはずの、携帯や財布はどこを探しても入っていなかった。
落胆の色を隠せないまま、最後に端にある小さなポケットを探った。
意外にも指先に何かが触れて、慌てて取り出すと小さな紙切れの中で、女の子が二人笑っている。
片方は何故か自分だと分かった。
その下に手書きの丸っこい字で、「瑠璃&茜 ベストフレンド」と書いてある。
あたしの下には「瑠璃(るり)」の文字。
「プリクラか……名前書いてあった?」
「あっ、はい。あたし瑠璃って言うみたいです」
見せてと言う彼の手にプリクラを置くと、つぶやくように繰り返す。
「…瑠璃ちゃんか………他に手がかりになりそうな物は?」
「いえ…何も……」
「そっか……とりあえず朝ごはん食べて警察に行ってみよっか。捜索願いとか出てるかもしれないし」
しょんぼりしてしまったあたしを元気付けるように、明るく言うとにっこりと笑いかけてくれる。
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