愛色-AIIRO-

31.

“今”そうしてしまったら同じことを繰り返すと思ったから。まだ自分は学生という立場であり、何もかもが自由ではない。

ごめんね、由依子さん。
由依子さんが待っていてくれている男はとても弱くて頼りない情けない人間なんだ。

でもちゃんと今度は同じ肩を並べられる大人になって必ず迎えに行く。二度と貴女を哀しませないように。全てのものから守れるように。

空を見上げる。
果てしなく続く遠く広がる青空に吸い込まれる桜の花弁。悠久の時を経てきたこの景色を、色を見つめながら……そう思ったんだ。

どんなに閉ざそうとしても無理なのは初めから知っていた。彼女を愛している気持ちはずっと永遠に変わることがない。

それに…扉の鍵はあの日、初めて由依子さんと会った瞬間に渡していたのだから、どんなに足掻いても諦めようとしても開け放たれる。