4.

2/9
4181人が本棚に入れています
本棚に追加
/593ページ
「失礼しました。菊池課長」 へ?…と未だに思考回路が途切れたままの私は相当なアホ面だ。緊張が走るこの状況下で静寂を切った叶多のその謝罪の言葉にやはり私はただ口をポカンと開ける事しかできないでいた。 「つい昔の癖で名前で呼んでしまいました」 疑いの眼のままの壱城君も状況を飲み込めていない様子。それでも尚、叶多は余裕の笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。 「俺が高校の時に担任だった先生と菊池課長が同級生でその時からの知り合いなんです」 ね?と微笑まれたその瞳が哀しさを帯びていて、言葉が出ない。自分の存在を隠されている事実。正直に付き合っているのだと本当は言いたいはずなのだ。叶多は…。 いや、私の口から言って欲しいのだ。 でも言えない。だからこそ私を庇ってくれた。
/593ページ

最初のコメントを投稿しよう!