31.

15/20
前へ
/593ページ
次へ
「そっか」 「そうだよ。理由つけて叶多を好きになった訳じゃないしね」 「え?」 「理由なく叶多しかいないって思ったから。だから信じて待ってた」 「……」 「それが人の心ってものなんじゃない?」 「あ…」と、二人の声が重なり由依子さんの指から結婚指輪が抜けた。少し残念そうにその指輪を見つめている。 その姿を見て徐に彼女の手を掴みリベングのソファに座らせる。未だに由依子さんに掛けられている首輪のチェーンをそっと外して、そして自分の結婚指輪も外して。その首輪のチェーンに今しがた外した指輪を通してあげた。 自分の首にもある首輪にも同様にする。 「少しの間だけだよ」 「これかも…」 「うん?」 「理屈っぽく言ってても、これがあったから待ってられたんだね」
/593ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4184人が本棚に入れています
本棚に追加