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私、菊池由依子32歳。伊達に仕事一筋に生きて来たというわけではない。今や世もときめく“Amour Couleur”タムールクルール。親しみを込めて“タムクル”と呼ばれ、通称恋色シリーズを世に広めた一員である私は現在異例の若さで営業部広報課課長の座に君臨している。 鬼の菊池。 修羅の課長。 大魔王…。 などとわけの分からない異名を付けられている。極めつけが未だ結婚に辿り着けていないからなのか、“仕事人間”として扱われていたりする。 ……だけど。 営業部のフロアが一斉にざわついた。その殆どが女子社員の黄色い声で……、 ガラス張りのフロア入口にシワ一つないスーツを着こなした男の人が2人。一方は我がフェアリーの副社長の三井清高。元々私が新入社員の時の指導係だったが、その実力を買われ統括マネージャーとして活躍し、ニューヨーク支社長を経て現在に至る。 …そしてもう一方の男の人が今日のメインだろう。
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