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昭和28年東京。
梅雨時期に入る少しだけ前。
知典(とものり)は生を受けた。
両親は見合い結婚。
母親は北海道から嫁いできた。
母親は気性の強い女性だった。
そのため、夫の家族とよく揉めた。
何度も繰り返しているうちに、とうとう1歳に満たない知典を連れて地元に帰り、強引に離縁してしまった。
主な理由は夫の実家が極道だと知らずに嫁いだからだそうだ。
母親は良家の出で、プライドも高かった。
地元でまたすぐに見合いの話があった。
相手は地元では有名な電気屋の社長。
その男は厳しすぎる性格が原因で嫁に逃げられ、子も二人いた。
家事ができて、尚且仕事もできる学のある女性を希望していた。
知典の母親は当時では珍しく大学出であったし、最初の結婚までは長く銀行に勤めていた。
働くことが好きな母親は、すぐに再婚の決断をした。
こうして幼い知典は、谷藤(たにふじ)家の二男としてこの家で生活していくこととなったのだった。
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