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「まったく、今日もお前は遅刻か!!!」
朝から担任の馬鹿でかい罵声
が鼓膜を不快なほど刺激するので、俺は目を伏せた。
(それは聞き飽きたっつうの……)
楓は担任を睨みつけながら心の中で悪態を付く。
「まったくおまえは!! この前も遅刻したじゃないか!! こんなんでは単位なんか取れんぞ!!!」
(それも何百回と聞いたっつうの……)
担任の言葉に更に悪態を付く。
近くで女子がこちらを盗み見
ながらクスクスと笑っている。
向こうでは男子がこちらを指差し必死に笑いをこらえている。
(どいつもこいつも……、気にくわねぇ……)
そんなクラスの奴等を睨みつけながら胸にこみ上げる激しい怒りをなんとか押さえつける。
「……ったく、今度は気をつけろよ!!」
担任はそう吐き捨てると、ツカツカと教室を出て行った。
担任の姿が見えなくなると、
クラス中が一斉に騒ぎ出した。
女子、男子がそれぞれ好き勝手に話しをする。
楓は机に塞ぎ込み耳を覆った。
「ホント、相変わらずだな……」
「何を好き好んで遅刻するのやら……」
「今度楓を付けてみようぜ、あいつがいう『不幸』が生で見えるかも知れないし……」
遠くの方で男子がこちらにも聞こえるように話している。
「ねぇ、マジでバカなんじゃないの?」
「だよね~。楓ってなんか暗いし、自分から『不幸』とか言ってるし、頭オカシイんじゃないの?」
「キモッ……」
近くで女子の声が聞こえる。
(もううんざりだ……)
楓は席を立った。
その時クラス中が一瞬静かになったが、また何事もなかったかのように話し始めた。
楓は無言で教室を出て行く。
誰も呼び止めない。
それよりか、楓を指差して笑っている奴もいる。
楓はそんな奴等を一瞥することもなく、そそくさと歩いていった。
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