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目を開けると、ぼんやりと空が見えた。
(俺……、いったい……?)
楓はまだ寝ぼけている脳を叩き起こそうしたが、うまく動かない。更に体中の力が抜けていて力が入らないのだ。
だが、暫くしたら少しずつ力が戻ってきて脳も働いてきた。
楓はゆっくり体を起こすと改めて空を見た。
少し薄暗くなってきている。
「今何時だ……?」
楓はポケットから携帯を取り出して電源を入れる
「……遅くない?」
携帯が早く立ち上がらないこ
とに苛立ちを感じる。
この学校は携帯を使うことができない。だから、こうして電源を切って密かに持っこなければならないのだ。
楓だけでなく、全校生徒が持ってきているだろう。
(電波障害になんか異常でもあんのか……?)
楓はなかなか立ち上がらない携帯を握る力を無意識に強める。いつもなら20秒もあれば立ち上がるのに、今日は40秒以上掛かった。
「何時……、5時!?」
楓は携帯の画面に驚いた。
時間は5時03分を示している。
朝のSHRから考えると、10時間以上ここにいたことになる。
「って事は今日の授業は……」勿論、今日の授業は全て終了している。
「あぁ……、やっちまった」
楓はガックリと肩を落とした。このままでは卒業はおろか進級ですら危うい。
(また担任(あいつ)に怒鳴られるのか……)
そんなことを思いながら屋上を後にした。
階段を下りているとき、ふと頭を過ぎったのは髪の長い女子生徒の後姿だった。
(あの子はいったい……?)
楓は立ち止まったが、あまり考えないことにしてスタスタとその場を後にした。
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