嫌われ者で落ちこぼれ

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「まあ、俺が高校に通えてる時点で奇跡なんだし……タマルさんには感謝しないとな」 俺は白髪の優しいおじいさんの顔を浮かべる。 タマルさんは貴族の中でもこの辺では群を抜いて権利をもつタマル家の現当主だ。 俺はそんなタマルさんに養ってもらっている。 幼い俺が両親を失い、野垂れ死にそうになっていたところをタマルさんに拾われ、使用人として屋敷に迎えられた。 今ではタマルさんの顔利きで高校にまで通わせてもらっている。 この恩は必ず返さなければならない。 「授業戻りずらいな~……」 そんなことを言って、戻る気なんてないんだけどな。 今日はここで授業が終わるまで時間を潰して帰ろう。 あまり早く帰るとタマルさんだって心配するだろうし…… このいい天気の中で屋上にいるのでさっきから眠気がかなりきている。 そうして俺は、赤い目を空から隠すようにゆっくり目を閉じた。
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