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「遅くなってすみません!! ただいま帰りました!!」
学校から屋敷までのダッシュで汗が止まらない。
それに息も苦しくて、最悪だ。
「どうしたんだい? アラン、 遅かったじゃないか。 そんなに息を切らして」
目の前には白髪で凛々しい佇まいの老紳士が立っていた。 タマルさんだ。
「史学の補習がありまして、それを受けていました。 連絡を入れてなくてすみませんでした……」
まあ嘘なんだけど。
屋上で寝ていたらこんな時間になってしまっていたなんてとても言えない……
「そうか、確かアランは史学が苦手だったな。 勉学に勤しむのは悪いことではないぞ。 だが、次からはしっかり連絡をとるように」
「はい! 気をつけます」
タマルさんはポンポンと俺の頭に手を乗せてから自室へ戻っていった。
こんな何気ないやり取りが俺にとっては大切なものだ。
俺がちゃんと一個人として扱われるのは、タマルさんといるときと、親友であるメーアとマークといるときだけだ。
「明日……謝まんないとな。 許してくれるかな? メーアは」
アイツはかなりの頑固者だし、てこずりそうだ。
でも、アイツだって俺を大切に思ってくれてるからこそ怒ったんだ。
俺がちゃんと謝らないと……
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