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一 そして、過去へ
かれこれ六年間になる。
コレルリのヴァイオリン曲<ラ.フォリア>のなかに、今日子が在るようになったのは。
その曲は小型CDプレイヤーから流れ、故意に耳を傾けるわけでもなく、今日子はただそこに存在していた。
日常生活はそこから始まり、そこに帰っていった。
昼下がりの部屋の中には、ブラインドを上げた窓から、もうすぐ刈り入れられる稲穂の香ばしい匂いを乗せて、初秋の風がそよいでいた。
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