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赤信号が青に変わる。
ゆっくり止まったタクシーを横目で見ながら、目的地についた。
ATMはおばさんの声で僕に話しかける。僕は通帳を差し出し、ATMはそれを飲み込む。
期待はしない。ただの気休め。何かの確認にここにくるだけ。
吐き出された通帳。
明細書には「未記帳はありません」そして薄くかすれた「残高0」の文字。
やっぱり。
お金があるわけないのは知っていた。少しばかりの奇跡を期待していた。
無いのを知っていても、それが一つのきっかけとなって僕に襲いかかってきた。
黒い塊。
雲のように心を覆う。
妄想は加速する。
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