浮き島

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海辺の砂浜に自転車が倒れている。 浜辺には人がうつ伏せで波にゆられている。 動かない。 それが僕。 近くを通りかかったカップルが僕を見つける。 消防隊が駆けつけて、僕を救急車に乗せるが手遅れ。 死後2日が経っていた。 僕の家は生活の後が手に取るようにわかる。洗濯カゴに服は丸まっていて、机は少し埃をかぶっている。 乱雑な机の上には紙切れが一枚。ボールペンで字が書いてある。 「海へ行きます。」 汚く右上がりの字。 遺書ではない。 書き置き。 誰にみせるでもない。 誰にも迷惑をかけない死に方だと思った。
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