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俺は腕時計を見ると、まだ夜の八時であることを知った。 撮影が始まったのは五時前くらいだったから、三時間もあの苦痛の中に居たことになる。 「真白、母さんは会社に戻らないといけないの。だから優花と一緒にご飯食べててね」 「分かった」 ようやく、他の家よりは大きいであろう自宅に着いて、また会社に向かう母親を見送った。 車が見えなくなると家の中に入って、優花がいるキッチンに顔を出す。 「あ、お帰りお兄ちゃん!」 「ただいま、優花」 「今日はね、お兄ちゃんが好きなカレーにしたから、早く着替えてきて!」 妹の優花は少し白雪に似た顔で笑った。兄弟だし似てるのは当然だ。 優花は一つ下の高校一年生であり、料理などの家事全般を担当していて、とても心優しい可愛い妹。 態々、俺を白雪にするのではなく優花にすれば良かったのだが、優花は勉学も部活も大変な為仕方無く俺が白雪になっているのだ。 どうせ俺は暇人さ。俺だってそこそこの進学校に通っているけど、部活はしていないから。 暇さえあれば読書をするくらいだ。 「お兄ちゃん、今日の撮影は誰だったの?」 「……櫂」 「櫂と!?」 言いたくもない名前を言うと、優花は驚き喜んでいるようだった。もしかして優花は櫂のファンなのか? あんな奴のファンになるなんて兄として認めはしない。あいつは変態で最悪な人間なのだから。 「優花、櫂はオススメしない」 「えぇ、なんでー?かっこいいじゃん」 「確かに見た目はな。でも、あいつは皮を被った変態悪魔だ!」 俺の必死な訴えで、優花は「可愛いお兄ちゃんに、そんなことするなんて許せない!」と言ってくれた。 これぞ素晴らしき兄妹愛! .
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