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「それで、なんで俺はここに連れてこられたんだよ?」
俺がそう問うと、如月社長が申し訳なさそうに答えてくれた。
「実は雑誌の撮影で相手役のモデルが来れなくなったんだ」
「それでね、その相手役のイメージが真白に合ってると思ったから連れてきちゃったの!」
つまり、一般人の俺にモデルをやれと言っているのだろうか?
「大丈夫よ!いつもそんな顔の見えないボサボサヘアーなんだから、誰もあんただなんて気付かないわ!それにメイクでばっちり"女"に変身させてあげるから」
「……ちょっと待て!今、"女"って」
「相手役は女だ」
なんで態々俺が女装までしてモデルをやんなきゃならないんだ!
「お願い、真白しかいないのよ!それに今日のために集まってくれたスタッフさんたちにも迷惑が掛かっちゃうの!本当にお願い」
「ぁああ!もう、分かった!分かったから!やればいいんだろ?」
「さすが、私の息子!」
結局、母親の押しに負けてしまった俺はメイク室に押し込まれる。
鏡の前に座らせられ、長い髪の毛を纏めて長髪のウィッグを被らされて、少し邪魔だった前髪がなくていつもより視界がクリアだ。
「メイクするので、目を瞑ってください」
人生初体験のメイクを施されて良い気はしないが、もうどうにでもなれと諦めるしかない。
目を開けたとき、自分はどうなっているんだろうと想像しながらメイクが終るのを待った。
「終わりましたよ!目を開けてみてください」
ドキドキしながらゆっくりと目を開けると、鏡の中の人物が本当に俺なのか疑ってしまうほど綺麗だった。
確かに俺は女顔だが、これほどにまで綺麗に変わってしまうメイクの凄さを身をもって体験した。
「あら、真白可愛いじゃない!取り敢えずこれが衣装だから今すぐに着替えてね」
そう言って上機嫌な母親に渡されたのは純白のワンピースと白のヒールの付いたサンダル。
「まじかよ…」
確かに代わりにやるとは決めたが、スカートを履くということにはやはり抵抗がある。
見た目がこんなになって今更だが、俺は盛大なため息を吐いてから覚悟を決めてそれに着替えた。
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