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「用意は出来たか?」
「如月社長」
突然メイク室に入ってきた如月社長に驚き少し緊張するが、彼は男が女装しているのに普通だった。
「社長なんて呼ばなくていいぞ?俺もお前のことは真白って呼ぶつもりだからな。母親を吉川と呼んでるから面倒くさいだろ?」
「そうですね、よろしくお願いします如月さん」
「撮影は緊張しなくていい。真白の相手は色々と理解のある奴だからな」
緊張していた俺を如月さんは安心させるように微笑んだ。気を使わせてしまったみたいだけど、その優しさは素直に嬉しかった。
「社長、そろそろ撮影で始めます」
「わかった、行くぞ真白」
「はい!」
相手の人って一体誰なんだろう?
俺はドキドキしながら如月さんの後を追って、撮影スタジオに出た。
「真白、本当に似合うわね!」
「正直、俺にとってそれは誉め言葉じゃないし」
「まぁ、いいじゃない!それでね、真白は今日一日『白雪』って名前だから」
先程の鏡の中の自分の姿を思い出して、その人物に『白雪』という名前は似合っていると思う。
なんだか本当にモデルになってしまったような気がする…
「えっと、君が僕の相手役の子だよね?」
「え、はい!……ぇええ!?」
肩を軽く叩いて挨拶する彼に、俺は驚きの声をあげてしまった。
「『Fragment derire』のケイです!よろしくね、白雪」
あの有名なバンドである『Fragment derire』のケイが相手役なんて、俺ってなんて幸せなんだろう。
憧れの『Fragment derire』に会えた俺のテンションは最高潮だった。
「はい!初めてなんでどうしたらいいか分かんないけど、頑張ります!」
「僕に任せて!少し密着するシーンあるけど、男同士なんだし大丈夫だよね?」
「はい!てか、俺が男って知ってたんですね」
「葵から聞いたからね。それに吉川さんの息子とも聞いた」
葵って如月さんのことだよな?
如月さんに一瞬視線を向けてから、ケイさんに向き直ると『白雪』以上に綺麗なケイさんは、何か意味ありげに笑っていた。
「それでは撮影を始めます!」
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