他愛もない嘘

3/10
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
『にしても咄嗟の事とはいえ、公園の名前がどんぐり公園しか思い浮かばないってのは情けないな』 さっきの会話内容を振り返って鷺は肩を落とした。 この登校中の男、宍戸鷺は生粋の嘘つきである。 嘘には人が喜ぶ嘘、悲しむ嘘、又は怒る嘘といろんな種類があるが、鷺にとってはどんな嘘も差して変わらない。 なぜなら、人を騙すことに罪悪感を感じていないからだ。無邪気な子供が悪戯するのに罪悪感を感じないのと同じで、周りなど見えてはいない。自分を満たしたいだけなのだ。 『なぁ、金貸してくんねえかな』 声のする方を見ると細い路地に数人のヤンキーが気弱そうな少年を取り囲んでいた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!