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お互い沈黙した状態のまま、どれぐらい経っただろう。
5分・・・いや、10分ぐらいは経っただろうか。
そんなときだった。
「力が欲しいか?」
先にこの沈黙を破ったのは『何か』だった。
しかし、予想外というかいきなりの言葉に反応できずに緋影は沈黙を続ける。
「力が欲しくはないか?」
『何か』は低くどこか冷たい感じの声で言う。
二度目の問いで緋影はやっと声を発する。
「意味がわからん」
あまりに拍子抜けた返事だった。
雰囲気もなにもあったもんじゃない。
でも現実はこんなものだ。
「力が欲しいならば、くれてやると言っているんだ。まぁ代償はもちろん頂くがな。」
『何か』は全く調子を変えずに言ってくる。
「力・・・か。代償はなんだ?」
「それは言えないな。」
「力って?」
「それは言えないな。」
「結局なにもわからねぇ」
少し呆れた様子で緋影は言った。
もはやこいつは何者なのかとか、どうやって家に入ったかなど気にしていなかった。
いや、気にするのを忘れていた。
「力も代償もそれは受け取ってからのお楽しみだ!」
『何か』はこの台詞のときだけは、なぜか少し明るく言った。
まるであらかじめ考えてあったかのように思えた。
それに関しては緋影はあえて触れなかった。
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