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ネオンに咲く傷ついた蝶々―2―
もうすぐ駅か。
ここに来るまでに
もう何回赤信号で停められたことか。
その度に
(くそっ、早くしないとあの子が…!)
頭に浮かんで来たのは彼女の顔だ。
どうして女性が苦手な僕が
たかだか一人の
ましてやキャバクラ嬢のために
こうして車を走らせているのか
思い当たる節はたった一つしかった。
滑稽なのは理解している
…利用されているのも
決して交われないのも。
でもいくら頭で分かっていても
人間の気持ちなんてものに
ストップを掛けられないことは
長いようでまだ短い人生の中で
十分学んでいるつもりだ。
しばらくして
言われた駅にたどり着くと
僕は車を脇に寄せて携帯を取りだした。
リダイアルから
零の番号を呼び出し、掛ける。
ところが
プルルルル ガチャッ
出たかと思うといきなり
「英輝助けて…変な人が…」
切羽詰まった
彼女の声が聞こえてきて
僕は焦った。
『え?零、どこに居るの?』
回りを見渡すが零の姿を確認出来ない。
「銀行の向かい側の駅前のベンチ…」
銀行?どこだ?
『銀行?』
咄嗟に右後ろを振り向く。
確かに銀行があった。あれか。
『分かった』
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