学校へ

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「雲母? お前……本当に彼氏出来たのか?」 「……ぅ、ぅん。か、か、彼氏と言うか……彼氏かな」 「なんだよそれ? 相手は何処の高校?」  ――な、なんて言えばいいのかな?! 「こ、高校じゃないよ……しゃ、社会人だよ」 「――ま、マジかッッ?! 何歳?? どこの人??」  興味津々の遊香はワクワクとしながら質問を重ねが、雲母の脳内は大変になる。説明すればするほど、頭の中に浮かぶ誠吾と過ごした日々。  こんなにあたふた乱れる雲母を初めてみた美希も思わず口を噤む。そんな質問を軽く済ませてた頃に、雲母は既にボロボロになっていた。 「……意外だったな。雲母に歳上の男が出来たなんて……」 「遊香ちゃんまずは注文しないですか?」  流石に可哀想に思ったのか、美希が救いの手を差し出せば「そうだね」とメニューを見るが……  ……ぁぅぁぅ~  雲母の熱した想いが直ぐに冷める事は無い。困惑する瞳でメニューを眺めるが、食べたいものが何も思い浮かばず。  結局、見かねた美希が、いつも雲母が注文するメニューを勝手に選んであげた。  なんとか食事を終える頃、雲母も平常心に戻る事が出来た。お腹も満たされデザートを味わいながら。 「ねぇねえ~雲母? ……どこまで行ったの?」 「……ん? どこまでって出掛けた場所?」 「違うよ! この流れなら分かるでしょ? 彼氏さんと」  ……どこまで? えっと……どこまで……  再び顔を真っ赤にさせる雲母は、熱々に早変わり。既に湯気を出し続ける乙女に、美希も遊香も思わず生唾を呑み込み、聞き耳を立てる。 「ぅぅ……ぃ、言わないと……だ、だ、駄目かな?」  しどろもどろに俯きながらに口をする雲母に「最後までか?」と遊香に言われて、黒髪が揺れる程に首を左右に振って答えた。  そこで、何故かホッとした表情を浮かべる遊香。美希もドキドキとしてると、ドリンクバーを取りに行くと称して雲母は逃げるようにテーブルから立ち去った。
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