学校へ

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 呼吸を整えながら一応確認をするために、手を頭に当てれば……モフモフとした肌触りのものがある。  うん、間違いない。やっぱり……狐さんになっている。  お尻からも立派な黄金色の尻尾が一つ。  この夏休みに人生が大きく変わる出来事に見舞われた。自分の内には、もう一つ魂が存在する。それは、白面金毛九尾(ハクメンキンモウキュウビ)と呼ばれる妖怪の存在だ。  どうも天狐と呼ばれる神様が、白面金毛九尾の魂を人間に転生させる工程にミスがあったせいで、なんと自分に宿ってしまったのだ。その白面金毛九尾の名前がクオである。  クオが目覚め、肩に現れると雲母の身体も反応をしてしまい、半妖化してしまう。それは外見で言えば、獣耳と尻尾が生えて、瞳が赤紫色に変化してしまうのだ。  何より問題が、人前でこんな姿を晒せる訳が無い。何時何時(イツナンドキ)姿を出すか分からないのが、また怖いものである。 「く、クオさん……あの~お願いがあります」 「ん? なんじゃ?」 「今はこの耳と尻尾はちょっと困ります」 「うぬ? 知らんわい。それより、此処は何処なんじゃ??」  既に周りをキョロキョロさせるクオに「あう」と弱い声を出す雲母は、困り動けない。  一応現状を説明して、どうにか半妖化を解除して欲しいのだが、この白面金毛九尾の狐様はまず偉そうと言うか、物腰が強い。  自分には無い強い部分を多く持つ。自信、色香、強欲と、まさに自分の真逆の美女であり、何より年齢(?)は二千年以上生きていた為に、此方の意見など容易く蹴散らされる。  なんとか説明をして、お願いしますの言葉を何回も口にした結果、漸く納得して貰った。  クオが呪文を口にすれば、雲母の耳と尻尾が消えるが……本人は気づかない。瞳の色は赤紫色のままなのに。  雲母はついでにクオにもう一つお願いをする事にした。最初からこうすれば良かったのかと思いつつも、出て来る場合に自分の狐耳と尻尾をなんとかして欲しいと。  交渉の結果、考えてやると言われただけで終わったりした。
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