学校へ

14/80
前へ
/632ページ
次へ
「雲母ちゃんのおじいちゃんの家は神社だったんだ」  意外そうに口にする美希に、遊香も同じく頷いたところで、雲母が話題を変える。 「そ、そろそろ行かないかな~? 皆、食べたし」  弱々しく伺う雲母。このままではパタパタし過ぎて自分が壊れそうだ。 「のう~汝? 儂も飽きた」  呟く妖狐様も、さっぱり自分の質問に答えてくれない雲母に飽き飽きしていた。周りの人間も何やら色々話をしているので、黄金色の大きな耳をピクピクさせて聞き耳を立てていたが、異性との恋愛話やら何かの愚痴などの話が飛び交っており、どれもクオにとって特段興味がある訳が無い内容であった。  ……ううっ、私も早く逃げたいです。  その思いが天に通じたのか。美希も賛同をしてくれ、遊香を押してくれたのだ。まだまだ、根掘り葉掘り訊きたい遊香は、まあ、まだ時間はあるからと言わんばかりに了承すれば、三人はファミレスをあとにした。  何より移動する際が大変であった。何が大変かと言えば……そう、白面金毛九尾様である。彼女も覚醒した事で驚いたのは世の中の進歩と変化。闇夜でも、燈台を使う火の灯りに変わる電気の存在や、情報を映像とさせるテレビなど、クオからすればこの世は未知に溢れている。  例えるならば、時を超え過去から未来に現れた存在。それも雲母が夏休み訪れた祖父の神社は、所謂、田舎である。山々の木々に囲まれた長閑で日本の古き風景が残る場所。  そんな場所に建つ家一つにも凄さを感じた妖狐様が、ファミレスを一歩出た街並みを見たら…… 「――ぬっ!? ……人だらけでは無いか?! ――な、なんじゃ……この建物は?!」  雲母の肩から見えるのは、人々が歩き回る忙しい都会の日常。しかしながら、クオからすれば想像を絶する光景であった。  勿論、肩では「汝!」と即座に呼ばれ、祭りでもあるのかと聞かれる雲母からすれば一体なんの事か分からず。  美希達の視線を盗み、ここはこれが普通であるんですと、短く伝えたが……  周りに聳える高層ビルを見上げながら思う。これが普通の光景なのは、やっぱり少しオカシイのかな。と。
/632ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1722人が本棚に入れています
本棚に追加